「N-アセチルシステイン投与で一部に改善が見られたとの報告があると聞き、原著論文をみてみました。

Grant, J. E.; Odlaug, B. L.; Won Kim, S. (2009). “N-Acetylcysteine, a Glutamate Modulator, in the Treatment of Trichotillomania: A Double-blind, Placebo-Controlled Study”. Archives of General Psychiatry 66 (7): 756–63.

 

アメリカのミネソタ医大精神科の研究チームによる研究報告で、2009年に発表されています。
この論文の要旨(まとめ)には、次のように書いてあります。
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抜毛症の治療における、グルタミン酸調整因子N-アセチルシステイン

背景:抜毛症は、反復的な抜毛を特徴とし、目に見える脱毛の原因となる。抜毛症の薬物治療に関するデータは、セロトニン作動薬についての矛盾する研究データしか存在しない。アミノ酸であるN-アセチルシステインは側坐核における細胞外のグルタミン酸濃度を回復させると考えられており、強迫行為を低減させる可能性がある。

目的:抜毛症の成人におけるN-アセチルシステインの効果および耐容性を決定する。

試験計画:12週間の二重盲検プラセボ対照臨床試験。

施設:外来治療センター。

患者:抜毛症患者54人(女性45人、男性5人;平均年齢34.3歳[標準偏差12.1])。

介入:N-アセチルシステイン (用量1200~2400mg/日)またはプラセボを投与した。

主要な結果評価:患者を、マサチューセッツ総合病院抜毛尺度、臨床全般印象尺度、精神科抜毛症尺度、ならびに、うつ状態、不安、心理社会的機能の測定を用いて評価した。全例について分散モデリング解析および線形回帰によって結果を解析した。

結果:マサチューセッツ総合病院抜毛尺度(P=.001)による評価では、N-アセチルシステインを服用した患者では抜毛症状の有意な減少がみられた(P<.001)。患者の56%がN-アセチルシステインの使用により「良好に改善、または極めて良好に改善した」のに対し、プラセボでは改善が16%に留まった(P=.003)。顕著な改善が最初に認められたのは、治療9週目であった。

結論:本研究は、著者らの知る限り、抜毛症の治療におけるグルタミン酸薬剤の効果を試験した最初の研究であり、N-アセチルシステインは、統計的に有意な抜毛症症状の改善を示した。N-アセチルシステイン群に有害事象は認められず、N-アセチルシステインの耐容性は良好であった。強迫行為の範囲のコントロールに有用である可能性がある。

治験登録:clinicaltrials.gov Identifier: NCT00354770.

 

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「N-アセチルシステインを飲み始めたオトナ(平均約34歳)の約6割で、9週目から抜毛が減った」

ということです。
(私的には、患者さんの年齢の高さにビックリしました…。後日紹介する予定の本文に書いてありますが、参加した患者さんの最高齢は65歳だったそうです。)
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上は、臨床全般印象尺度の結果を示すグラフです。▲がN-アセチルシステイン、□がプラセボ(偽薬、つまり、ただのお砂糖)で、縦軸が効果のあった患者さんの割合、横軸が経過時間を表しています。
プラセボでも16%の人に改善があった理由ですが、まさに「プラシーボ効果」か、あるいは自然に治まったと考えられます。

が、この論文、気になる点がてんこ盛りなのです…。
(つづく)