サプリメント(N-アセチルシステイン):その(3)
」の続きです。

ミネソタ大チームの論文
の758ページの「STUDY DESIGN(試験計画)」のところに、気になる箇所がありました。

この試験は、「ランダム化二重盲検試験」を採用しています。

この方法は、患者さんを、N-アセチルシステインを飲むグループと、プラセボ(偽薬)を飲むグループの2つにランダムに分け、どっちのグループがN-アセチルシステインであるかが、お医者さんも患者さんにもわからないようにする方法です。

お医者さんにも知らせないのは、お医者さんが、無意識のうちに、薬の効き目を、実際よりも良くみたり悪くみてしまう可能性(観察者バイアス)を防ぐためです。また、お医者さんが知っていると、無意識のうちに、患者さんにヒントを与えてしまう可能性もあります。

この手法にのっとって試験をしたのは、きわめてスタンダードなのですが、問題は「量を増やした理由づけ」です。

最初、N-アセチルシステインもプラセボも、1日1200mgの量を患者さんに与えていました。

しかし、6週間目に、改善のみられなかった患者さんの量を、1日2400mgに増やしているのです。

量を増やした理由について、

「ヒト免疫不全ウィルス、コカイン依存症や、病的賭博(ギャンブル依存)などの他の衝動調節障害における試験でのN-アセチルシステインの安全性および薬効の結果に基づいて…」

と書いてあります。ギャンブル依存症はまだわかりますが、抜毛症とヒト免疫不全ウィルス(HIV)はまったく無関係なので、まったくもって意味不明です(爆)。

著者らは、761ページの「見解(COMMENT)」のところで、「N-アセチルシステインを飲んだ患者さんの44%で効果がみられなかった」理由について、「遺伝(異型遺伝子)ではないか」と推測しています。しかし、「遺伝」って言っている割には、具体的にどの遺伝子か書いていません…。

うがった見方かもしれませんが、「データの分析や検査の方法により、データを、研究者の望みの結果にみせる」ことは、いくらでもできます…。

けっして、「この論文のデータがそういうデータだ」というつもりはありませんが、「抜毛症とHIVの関連がちょっとよくわからない…あせる」ので、意地悪に解釈されてしまっても仕方ないような気もします。

とはいっても、この論文が載った「Archives of General Psychiatry」は、精神科の専門誌としては評価が高い(査読付きでインパクトファクターも高い)ようですし、筆頭著者(論文で一番先頭に載っている著者)はアメリカの有名な精神科医です。

なので、N-アセチルシステインが効果があるかどうかについては、ほかの研究を待ったほうがよさそうです。

(もし、本当に効果があるのであれば、N-アセチルシステインはすでにほかの用途(適応)で承認済みなので、前臨床試験など承認手続きを大幅に省けるため、製薬会社が見過ごさないはずはないとは思います。なので、効果があれば、きっと製品化されるでしょう。)